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責任役員の対立で運営がストップ…寺院内の紛争を泥沼化させないためには

2026.02.05責任役員の対立で運営がストップ…寺院内の紛争を泥沼化させないためには

寺院や宗教法人の運営において、住職(代表役員)にとって最も心労が重なる問題の一つは、責任役員との対立ではないでしょうか。

「お寺を支えてくれるはずの役員と意見が合わない」、「予算案が承認されず、本堂の修繕が進まない」「嫌がらせのように重箱の隅をつつくような指摘を受ける」……。こうした状況は、単なる意見の相違を超えて、寺院の存続を揺るがす深刻な停滞を招きます。

本稿では、弁護士の視点から、責任役員との対立がなぜ起きるのか、そして泥沼化を防ぎ、法人の運営を正常化させるための法的な段取りについて詳しく解説します。

なぜ責任役員との対立は起きるのか

お寺は信仰の場であると同時に、法律上は宗教法人という法人格を持った組織です。この宗教法人の運営を担うのが、代表役員(住職)と、3名以上で構成される責任役員です。

宗教法人法における責任役員の権限

宗教法人法において、責任役員は法人の事務を決定する強い権限を持っています。一般企業の取締役に近く、以下のような重要事項は責任役員の合議(責任役員会)で決める必要があります。

予算・決算の承認: 事業計画や収支報告。

財産の管理・処分: 境内地の売却、借入れ、本堂の建て替え計画。

規則の変更: 寺院の根本ルールである「規則」の変更。

対立が生じる背景:宗教と事務の混同

紛争の多くは、「宗教上の権限」と「世俗的な事務運営の権限」の境界線が曖昧になることから生じます。

宗教法人法第18条6項では、責任役員の権限は「管理運営(事務)」に限られ、「教義」や「儀式行事」といった宗教적機能には及ばないとはっきり定められています。しかし、実際には「住職の布教方針が気に入らない」「後継者の選び方に納得がいかない」といった感情的な反発が、あえて「予算を承認しない」「ハンコを押さない」という事務運営の妨害という形で表面化することが少なくありません。

運営停止を回避するための法的な打開策

話し合いが平行線になり、責任役員会が機能不全に陥ったとき、感情論で対抗するのは得策ではありません。まずは「規則」と「法律」という客観的なルールに立ち返り、手続きを整理する必要があります。

手続きの瑕疵(かし)を徹底的に排除する

反対派の役員がいる場合、最も注意すべきは「手続きの不備」です。例えば、以下のような不備があると、せっかく行った決議が後から裁判で無効とされるリスクがあります。

招集通知の漏れ: 反対派の役員に通知を出さずに会議を開く。

招集期間の不足: 規則で定められた「○日前までの通知」を守っていない。

議題の未記載: 通知に記載のない事項を強引に決議する。

「いつも口頭で済ませているから」という慣習は、紛争時には最大の弱点となります。書面による厳格な手続きが、結果として住職様を守ることになります。

「利益相反」と「仮責任役員」の活用

特定の役員が、自分の利益のために決議を邪魔したり、逆に住職様自身が法人と取引を行ったりする場合、利益相反という問題が生じます。

例えば、住職個人が所有する土地を寺院が買い取る場合、住職は代表役員としての判断と個人としての利益が衝突するため、その議決には加わることができません。この際、住職を除いた結果、定足数(会議を成立させるのに必要な人数)が足りなくなることがあります。このような場合に有効なのが、仮責任役員の選任です。

【用語解説:仮責任役員(宗教法人法21条)】

代表役員または責任役員が、法人と利益が相反する立場にある場合、その事項については決議権を失います。その欠員を埋めるために一時的に選任される役員のことです。

「反対派が欠席し続けて定員が足りない」「自分が当事者なので決められない」という状況でも、法的な手順を踏んで仮役員を選任することで、滞っていた運営を前に進めることが可能になります。

実務上の注意点:よくある誤解と失敗例

現場でよく見られる「良かれと思ってやってしまう失敗」には、以下のようなものがあります。

誤解1:「過半数で決められるから、反対派は無視していい」

確かに多くの規則では責任役員の過半数で決するとされています。しかし、反対派を排除した会議運営を続けると、職務怠慢や善管注意義務違反を問われる可能性があります。反対意見があったとしても、適切なプロセスで検討し、議事録に残したという事実が重要です。

誤解2:「住職の権限で役員を解任できる」

多くの寺院規則では、役員の解任には厳しい条件が設けられています。「意見が合わないから」という理由だけで解任を強行すると、地位保全の仮処分を起こされ、さらに紛争が激化する恐れがあります。解任を検討する場合は、相当な理由を法的に構成する必要があります。

誤解3:「メールやLINEでのやり取りで十分」

近年増えているのが、SNSでのやり取りが証拠となって紛糾するケースです。断片的なメッセージは、後から文脈をねじ曲げて解釈されやすく、証拠として不利に働くこともあります。重要な意思決定は必ず書面と議事録で行うのが鉄則です。

弁護士が関与する具体的メリット

住職様お一人で、感情的になった役員と対峙し続けるのは、精神的な摩耗が激しく、本来の教化活動に支障をきたします。弁護士が介入することで、以下のような効果が期待できます。

メリット 具体的な内容
客観的な交通整理 何が「役員の同意が必要な事項」で、何が「住職の専権事項」かを法律と規則に基づき明確にします。
交渉の窓口(クッション) 弁護士が窓口となることで、直接の衝突を避け、冷静な対話の場を構築します。
証拠能力の高い議事録作成 後日の紛争を見据え、法的に隙のない議事録や招集通知の作成をサポートします。
裁判外での早期解決 裁判(訴訟)になると数年かかることもあります。交渉により、お寺の評判を守りつつ早期合意を目指します。

まとめ:お寺の「和」を取り戻すために

責任役員との対立を放置することは、お寺の運営を麻痺させるだけでなく、それを見守るお檀家様の不信感を招き、ひいては離檀の加速につながりかねません。

単に法律を武器に相手を屈服させることを目的とはせず、何よりも、住職様が本来の務めである布教や儀礼に専念できる、平穏な環境を取り戻すことを最優先に考えています。

「責任役員会がうまく機能していない」「反対意見ばかりで何も決まらず、寺の将来が不安だ」とお悩みであれば、お早めにご相談ください。

当事務所では、寺院運営へ多くの助言をしてきた弁護士が、貴山の規則やこれまでの経緯を丁寧に伺い、仮責任役員の選任手続きや規則の見直しを含めた、現実的かつ最適な解決策をご提案いたします。

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【ご注意】

・本記事は、寺院運営に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言を構成するものではありません。

・宗教法人の運営や役員紛争については、各法人の「規則」の内容や具体的な事実関係によって解決策が大きく異なります。個別具体的な事案については、必ず専門の弁護士にご相談ください。

・寺院法務・宗教法人法務においては、早期の段階で専門家が関与することが、トラブルの泥沼化を防ぎ、円満な解決へつながる鍵となります。

「一度、専門家の意見を聞いてみたい」という住職様へ

貴山の現在の状況を整理し、今後の進め方をアドバイスさせていただきます。まずはお電話、またはお問い合わせフォームより、法律相談のご予約をご検討ください。

(帆風法律事務所 弁護士 吉住豪起)

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