2020.07.01後遺障害の逸失利益について
交通事故によって,後遺障害が残存した場合,後遺障害によって,従前のような労働能力を発揮することができなくなります。このように後遺障害が残ったことによる逸失利益を損害として賠償請求することができます。
後遺障害による逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数によって,算定します。
後遺障害は,概念的には,症状が永久に残存し就労可能期間中に改善されることはないとされるのが原則です。就労可能期間は,67歳までとされますので,労働能力喪失期間の終期も通常67歳までとされます。
しかし,後遺障害軽度の場合,労働能力喪失期間が短縮されることがあります。その典型が,むちうち損傷などの比較的軽度の神経症状の場合です。
大阪地方裁判所の損害賠償の算定基準では,むちうちなど,比較的軽度の神経症状の場合の労働能力喪失期間は,後遺障害の等級に応じて,以下の期間を目安とすることとされています。
14級:2年から5年
12級:5年から10年
むちうち損傷の場合に,労働能力喪失期間が他の後遺障害より制限されるのは,馴化,つまり,慣れによって労働能力が回復する可能性があることが理由として挙げられています。
裁判実務上は,14級の場合は5年,12級の場合は10年と認定されることが多いようです。
なお,交通事故により後遺障害等級14級の障害を残したのち,数年経過し,症状が改善したあとになって再度交通事故に遭い,症状固定後も痛みが消失しないというケースがままあります。
このような場合,自賠責保険の運用としては,自覚症状としては事故によって新たに生じた後遺障害であると思われても,その障害が既存の障害と同じ部位に生じたものであれば、より重症とされる障害に当たらない限り後遺障害の等級認定がなされず,非該当という判断がなされます。
自賠責保険で非該当となったとしても,裁判を起こして加害者に後遺障害が生じたことによる損害賠償を請求することは可能ですが,裁判所において後遺障害が残存したことを認めさせるのは,なかなかハードルが高いようです。
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