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その「寺院規則」は今の時代に合っていますか

2026.01.29その「寺院規則」は今の時代に合っていますか

寺院の運営において、もっとも根本にありながら、もっとも後回しにされがちなのが「宗教法人規則(寺院規則)」のメンテナンスです。

日々、檀信徒の方々と向き合い、法務や行事に追われる住職様にとって、書庫に眠っている「規則」を読み直す機会は少ないかもしれません。しかし、時代の変化とともに、かつて定めたルールが現実の運営を縛り、ときには法人の存立を脅かすケースが増えています。

本稿では、弁護士の視点から、特に深刻化している「総代のなり手不足」を切り口に、規則の見直しがいかに重要であるかを解説します。

規則を最後に見たのはいつですか?

「総代のなり手が見つからないが、規則で定数があるから無理やり名前だけ借りている」「何十年も規則の中身を見たことがないが、先代からの慣習で運営している」

このようなお悩みをお持ちの住職様は、決して少なくありません。お寺にとって「宗教法人規則」は、いわば「お寺の憲法」です。現在、多くの寺院で使われている規則は、昭和26年の宗教法人法制定時に作成されたひな形をベースにしています。

当時は地域コミュニティが強固で、総代などの役職を担う「地元の有力者」が豊富にいた時代でした。しかし、人口減少、過疎化、そしてライフスタイルの変化が進んだ現代において、70年以上前のルールをそのまま適用し続けることには、リスクがあります。

規則と実態の乖離が招く法的リスク

もっとも多く見られる問題は、規則で定められた「総代の定数」を維持できなくなることです。

多くの寺院規則には、「総代は〇名以上置く」「檀信徒から選任する」といった規定があります。しかし、現実に候補者がいないからといって、定数を満たさないまま、あるいは選任手続きを経ないまま運営を続けていると、以下のような法的トラブルに発展する恐れがあります。

①重要事項の決議が「無効」になるリスク

宗教法人法や多くの規則では、不動産の処分、借入、住職の進退といった重要事項の決定に際し、「総代(または総代会)の同意・議決」を必要としています。もし規則通りの人数が揃っていない状態で決議を行った場合、その決定は手続き上の瑕疵(かし)があるとして、法的に無効と判断される可能性があります。

例:寺院の土地を売却しようとした際、反対派の檀信徒から「総代の定数が足りていない状態での決議は無効だ」と訴えられ、取引が頓挫してしまうといった事態です。

②役員変更登記ができない、受理されない

役員の任期が切れた際や交代の際、法務局での登記手続が必要になります。このとき、規則に定められた選任手続(総代の同意など)が適正に行われたことを証明する書類が求められます。実態が伴っていないと、登記手続がスムーズに進まず、法人の管理体制を疑われる原因となります。

実際、筆者の経験した事案では、単立寺院で代表役員が死亡したまま後任の選任がなされないまま放置され、その間に責任役員も1人になってしまい、代表役員も代務者も選任できないデッドロック状態になってしまった法人がありました。

行政が強める「不活動法人」への警戒

近年、文化庁や各都道府県の所轄庁は、いわゆる「不活動宗教法人」の整理を厳格に進めています。

宗教法人法第81条では、裁判所が解散を命じることができる事由として、「一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること。」などが挙げられています。役員や総代が選任できず、数年おきに行うべき役員変更登記が放置されていたり、毎年義務付けられている「事務所備付け書類の写し(役員名簿、財産目録など)」の提出(法25条)が止まっていたりすると、行政から「活動実態がない」とみなされ、調査や解散命令の対象となるリスクが生じるのです。

「人がいないから仕方ない」という現場の事情は、法的な場では通用しにくいのが現実です。「選べない」のであれば、法的に「選べる形」へ規則を変えることが、法人を守る重要な手段となります。

実務上の注意点:今の時代に合わせた「規則変更」の視点

規則の変更(規則変更)は、単なる事務手続ではありません。お寺の「運営の仕組み」を現代版にアップデートする好機です。具体的には、以下のような見直しを検討します。

定数と資格要件の柔軟化:「総代5名以上」を「3名以上」とするなど、無理のない人数へ変更する。

意思決定プロセスの合理化:総代会の役割を、すべての事項に決定権を持つ「議決機関」とするのか、住職の判断をサポートする「諮問機関」とするのかを明確にします。責任の所在をはっきりさせることで、迅速に判断を下せる体制を整える。

デジタル化・事務の効率化:「書面決議」や「オンライン会議」の可能性を規則に盛り込むことも一案です。多忙な現役世代が総代に就任しやすくなる環境づくりは、次世代への継承において非常に重要です。

弁護士が関与する意義

規則の変更は、住職様お一人の判断で完結するものではありません。そこには必ず「合意形成」と「法的手続」が伴います。

①宗派(本山)との調整:多くの寺院は包括宗教団体(宗派・本山)に属しており、規則変更には本山の承認(承認申請)が必要です。国家法である宗教法人法と、宗派のルールの両方を整合させる必要があります。

②檀信徒への丁寧な説明:弁護士が第三者的な立場から、「お寺を将来にわたって守り続けるための、法的に必要な手続きである」と説明することで、納得感のある合意形成が可能になります。

③議事録等の作成:後々の紛争を防ぐためには、規則変更に至るプロセス(責任役員会や総代会の開催)を、正確な議事録として残しておくことが不可欠です。

お寺を永続的に発展させる

「自分の代で規則を変えてもいいのだろうか」と、先代への申し訳なさを感じる住職様もいらっしゃいます。しかし、「今の時代に機能しないルール」をそのままにしておくことこそが、未来の住職や檀信徒にとって最大の負担(負の遺産)になってしまいます。

今、規則を整えることは、お寺の永続性を確保し、次世代が安心して寺門を興せる環境を作る取り組みにほかなりません。

当事務所(帆風法律事務所)では、大阪弁護士会に所属する弁護士として、関西圏を中心とした数多くの寺院運営をサポートしてまいりました。寺院特有の慣習を尊重しつつ、法的な守りを固めるお手伝いをいたします。

・「今の規則が現状に合っているか診断してほしい」

・「総代のなり手がおらず、次の役員改選が不安だ」

・「本山への申請手続きをサポートしてほしい」

このようなお悩みがありましたら、まずは一度、お気軽にご相談ください。早期の相談が、将来の大きなトラブルを未然に防ぎます。

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【ご注意】

・本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を構成するものではありません。

・宗教法人の運営や規則変更については、各法人の規則内容や所属宗派の規定により対応が異なります。具体的な手続きにあたっては、必ず弁護士等の専門家へご相談ください。

・寺院法務においては、問題が表面化する前の早期相談が、円満な解決とトラブル予防に直結します。

(帆風法律事務所 弁護士 吉住豪起)

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